女性なら『ツーリスト』の一場面で、アンジェリーナ･ジョリー扮する謎の美女がベニスの超高層ホテルに着き、衣装棚をそっと開けると、ジャーン！　最新高価ドレスとキラキラと光る宝石の数々が手招く夢のような瞬間に胸をときめかせるはず。
『ジョニーとはじめて会って、何てユニークな人なんでしょう、思った通りのルネッサンスマンだなって。彼の絵も素晴らしいし、子供たちを相手にしている時のジョニーは、何とも幸せそうで、親バカで、まるで溶けてしまいそうなほどスウィートなのよ』
『ツーリスト』に魅かれたことについて。
『ロマンチック･スリラーというジャンルが小さい頃から大好きで、オードリー･ヘプバーンとケーリー･グラントの「シャレード」や、「北北西に進路を取れ」などを見てはため息をついていた。母も好きで、よく一緒に見ていたわ。今回は監督のフローリアンにペースを預けて、ゆっくり体の動きを意識して動くこと、と忠告されて、今までの私はスピードに走って、すごく速く歩いたり、立ち上がったりしていたのを、抑えに抑えて、ヨーロッパのエレガンスを漂わせる努力をしたのよ。アクション映画のパワフルな動作もダメで、ボートに這い上がろうとする悪党をやっつけるのに、救助用の浮き輪を使ってゆっくりと殴るなんて、今まで考えたこともなくて笑ってしまったり。ベニスの運河は曲がりくねっているので猛スピードでボートを走らせるわけないからと、これも大して速くなくて、スピード狂の私はちょっと手順が狂ってしまった。ドレスはどれも特別にハンドメイドされていて、それは豪華で、ダンスパーティーに付けたネックレスは有名なティアラを基に作ったのよ』
（続きはＳＣＲＥＥＮ3月号でご覧下さい）
TEXT by 成田陽子