SCREEN

  • ●今月号目次
  • 購入はこちらから
  • モニター募集
  • ●年間定期購読

SCREENコレクション

SCREENストア

商品カテゴリー

INFORMATION

  • ダニエル・ラドクリフが主演作を連発
  • カンバーバッチとギレンホール共演か
  • カンヌ国際映画祭レポート2017その1
  • 美しき銀行強盗に扮するマーゴット
  • ジョニー・デップに新作情報が相次ぐ
  • J・アイゼンバーグに二つの新作情報
  • トム・ハンクスが人々にニュースを読み伝える男に
  • カポーティーのパーティーに潜入を試みるカップル
  • ジョニー、「最後の海賊」プレミアで日本訪問を約束?
  • デパルマ新作にコスター・ワルドーらが出演
  • コリン・ファース オートグラフ
  • マーク・ハミル オートグラフ
  • なつかしのハリウッドスターカレンダー2017
  • ドクターストレンジ
  • シネマレビューノート
  • アリスインワンダーランド
  • シネマ グッズ
  • コミコンレポート
  • 編集長BLOG
  • SCREENアーカイブ

SCREEN ONLINE 会員募集

近代映画社 WEB


News

カンヌ国際映画祭レポート2016 その10

最高賞パルムドールにケン・ローチ監督の「アイ、ダニエル・ブレーク」

5月11日から開催された第69回カンヌ国際映画祭は、22日にパルムドールをはじめとするコンペティション部門の各賞を発表して閉幕した。授賞式の模様をCSテレビのライブ中継でご覧になったかたも多かろう。グザヴィエ・ドランやジャン・ピエール・レオーら受賞者たちのスピーチが長めだったが、今年のコンペティション部門の出品作21本のうち12本も2時間を超える長編だった。チェックするプレス関係者は例年よりも忍耐を要した。連日、朝8時30分からと、夜19時か22時のプレス向け上映があるのだから。それを1本でも見逃すと、翌日の追加試写か、最終日にコンペ作21本をいくつかの劇場に分けて上映するチャンスに臨まなくてはならない。幸い、今年は1本の追加試写のみで全作を制覇した。
さてコンペティション部門の21作を審査するのは「マッドマックス 怒りのデス・ロード」で勢いに乗るジョージ・ミラー監督率いる9人の審査員団。いかにもうるさそうなドナルド・サザーランドをはじめ、ヴァネッサ・パラディー、キルステン・ダンスト、ヴァレリア・ゴリノら女優陣をどう手なづけて、ミラー色の授賞結果を出すか、見ものだった。あの破天荒な、ぶっ飛んだ作風同様に、驚きの結果を。
ところが意外や意外、結構まともな選出結果に、ミラーも本領発揮できなかったか、あるいは本人は正統派の、まともな感覚を持った人物なのか。受賞作品を眺めてみると、そういえば強烈なセックスシーンのある作品はオミットされているではないか。
注目のパルムドールは、仕事を失ったしがない職人が理不尽な行政に立ち向かう姿を、社会派ケン・ローチ監督が描いた「アイ、ダニエル・ブレーク」に贈られた。この受賞はもっともで、誰もが何か賞を取ると予想していた。常に貧しい労働者階級の味方とされるローチ監督の本領が発揮された作品で、「権力に対する抗議という映画の役目、伝統を忘れてはならない。いま世界は危機にある。人々に希望を持ち続けるようメッセージを投げかけたい」と語るローチ監督の受賞スピーチが心強かった。
今回、下馬評の高かったドイツの女性監督マレン・エーデによるキャリア女性ドラマ「トニ・エルデマン」や、ジム・ジャームッシュ監督の「パターソン」、ジェフ・ニコルズ監督による人種差別ドラマ「ラヴィング」などが無冠となり、評判のあまりよくなかったクリステン・スチュアート主演作「パーソナル・ショッパー」のオリヴィエ・アサイヤスが監督賞、アンドレア・アーノルド監督の「アメリカン・ハニー」が審査員賞とはオドロキ。
さらにグザヴィエ・ドラン監督の「イッツ・オンリー・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド」も、いつものドラン・テイストが発揮されていないとの評判が多かったが、グランプリ受賞となった。これはエイズで死期の近い若き小説家が12年ぶりに帰郷し、母親、兄夫婦、妹との心のぶつかり合いを綴った家族ドラマ。ギャスパー・ウリエル、レア・セドゥ、マリオン・コティヤール、ヴァンサン・カセル、それにナタリー・バイの豪華キャスト。繊細なドラン監督は評価を気にして、授賞式には神妙な顔で臨んでいたが、受賞発表に「作品のエモーションを理解してくれてありがとう」と涙ぐんでもスピーチ。日本での公開も決まったので、ぜひチェックしてほしい。
アスガー・ファルハディ監督の「セールスマン」は最初から評価が高く、脚本賞とシャハブ・ホセイニの男優賞は当然。女優賞は、フィリピンの貧民街で商売をする肝っ玉母さんを描いたブリランテ・メンドーサ監督作「マ・ローサ」のジャクリン・ホセが受賞。並みいる美しい女優たちの中から選ばれるなんて、快挙というしかない。最後にパルムドール名誉賞を受けたジャン・ピエール・レオーに大きな拍手を送りたい。
(写真左はパルムドール受賞後のケン・ローチ)


■主な受賞一覧
<長編>
パルムドール 「アイ、ダニエル・ブレーク」(ケン・ローチ監督)
グランプリ 「イッツ・オンリー・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド」(グザヴィエ・ドラン監督)
監督賞 クリスティアン・ムンジウ(「バカロレア」)、オリヴィエ・アサイヤス(「パーソナル・ショッパー」)
審査員賞 「アメリカン・ハニー」(アンドレア・アーノルド監督)
脚本賞 アスガー・ファルハディ(「ザ・セールスマン」)
女優演技賞 ジャクリン・ホセ(「マ・ローサ」)
男優演技賞 シャハブ・ホセイニ(「ザ・セールスマン」)
<短編>
パルムドール 「タイムコード」(ファンホ・ギメネス監督)
審査員特別賞 「ザ・ガール・フー・ダンスド・ウィズ・ザ・デビル」(ホアロ・パウロ・ミランダ・マリア監督)

カメラドール 新人監督賞 「ディバインズ」(ハウダ・ベンヤミナ監督)

パルムドール名誉賞 ジャン・ピエール・レオー

レポート:岡田光由

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

▼過去の記事を読む