阿部ちゃん、是枝監督作で初カンヌ!
スクリーンでもオフ・スクリーンでもいつもカッコいい阿部ちゃんこと、阿部寛が情けないダメ男に扮して主演したのが、是枝裕和監督の「海よりもまだ深く」だ。小説家として大成せずに探偵業で小銭稼ぎ。賭け事に目がなく、別れた妻に未練たらたらといった具合のダメぶり。しかし、これがカンヌ映画祭のある視点部門にエントリー。そのおかげで彼は初めてカンヌのレッドカーペットを踏みしめた。「あの広さ、スケールの大きさには驚いた。そこを是枝監督と共演の樹木希林さん、真木よう子さんと一緒に歩けて、感動しました」と初カンヌの感想を述べた。
さらに阿部ちゃんを感激させたのが、5月18日夜に開かれた正式上映会で、5分間以上のスタンディングオーベーションを受けた時だ。「温かい拍手の嵐で、横にいた監督の顔を見たら、胸に熱いものがこみ上げてきて…。是枝監督がカンヌにいかに愛されているかがよくわかった。僕も少しでも顔を覚えてもらいたいなと思いました」と、俳優としての欲が出て来たかな。
また「カンヌは観客と一緒に観るスタイルがいいね。そして映画が認められる瞬間が味わえて、とてもいい」とも。
カンヌは、是枝監督の「そして父になる」に次いで二度目という真木よう子は、彼女の持ち味同様に終始クールだった。もう一人の共演者である樹木希林も、昨年の「あん」に続いて二度目だが、会場で外国のファンから日本語で「ありがとう」と声を掛けられてうれしかったとか。次いで「私はもう人前に出る状況じゃないの。もっと若い人たちにカンヌへ来てほしい」と次世代の映画人たちに呼びかけた。
そんな中、是枝監督が話す「カンヌは作品に対して、評価に対して一番厳しいところだと思う。だからいつも真剣に向き合う、緊張感を持たなくてはと。カンヌのようなステージに作品を持って来られる映画の作り手でありたい」というコメントが印象的だった。
(写真:壇上で挨拶する是枝監督、真木、阿部、樹木)
レポート:岡田光由