イザベラ・ロッセリーニが
ある視点部門監督賞受賞の黒沢清に祝福!
映画祭も最終日前日、うれしいニュースが飛び込んできた。ある視点部門エントリーの「岸辺の旅」配給関係者からメールで『黒沢清監督が何か賞を取りそうなので取材をお願いします』とのこと。監督は滞在中のパリから急きょカンヌへ戻って、夜6時半からの授賞式に駆けつけた。
このある視点部門は独創性や美学に焦点を当てた作品をセレクトした部門で、河瀬直美監督の「あん」と黒沢清監督の「岸辺の旅」が選ばれていた。授賞式に呼ばれたことは何かの賞が与えられるとあって、日本のマスコミ陣も期待をもって発表を待つ。未来賞、有能賞に続いて監督賞に黒沢監督の名前が読み上げられた。監督にとって08年の同部門審査員賞受賞の「トウキョウソナタ」以来の快挙である。壇上に上がった監督は『こんな地味な作品に審査員の方々が一つの輝きを発見してくださり、感謝しています。こういうことが起こるのがカンヌなのかなと。本当にありがとうございます』とスピーチ。
上映後のカクテルパーティーで審査員長のイザベラ・ロッセリーニにお祝いの言葉をかけられ、『私も母イングリッド・バーグマンが亡くなって長くなりますが、いつもそばにいるように思っています』と。ひょっこり現れた亡き夫と旅に出る妻を描いた「岸辺の旅」に共感されたことがよくわかる。監督は『人は死んで何かが断ち切られるのではなく、死んでから何かが始まるという考え方を世界中の人たちが持っていると感じました』と感慨ひとしおだったようだ。
■ある視点部門受賞一覧
大 賞:「ラムズ」(グリムール・ハッコナルソン監督)
審査員賞:「ザ・ハイ・サン」(ダリボワ・マタニック監督)
監督賞:黒沢清(岸辺の旅)
有能賞:「ザ・トレジャー」 (コルネリウ・ポラムボワウ監督)
未来賞:「マッサーン」 (ニーライ・グアイワン監督)
「ナーヒド」(アイダ・パナハンデ監督)
レポート:岡田光由
写真: “ある視点部門”監督賞受賞のスピーチをする黒沢清監督。監督の向かって左後ろにイザベラ・ロッセリーニ
Photo by Mitsuyoshi Okada