妻夫木聡がホウ・シャオシェン監督と
コンペ作品「黒衣の刺客」を語る
台湾のホウ・シャオシェン監督の7度目となるコンペティション部門出品作「黒衣の刺客」に、主演のスー・チーと共演した妻夫木聡が記者会見に次いで正式上映に出席するなどして、初めてのカンヌを味わった。
『パルムドールを競うコンペ部門の出品作に参加でき、ここカンヌにやって来られてうれしい。とにかく世界の映画人たちと一緒にいられることがとても刺激的だ』と興奮気味。『シャオシェン監督とは10年前の釜山映画祭で出会ったのがきっかけ。その監督から出演オファーが来るなんて信じられなかった』とも話す。
シャオシェン監督はその時の印象を『妻夫木は明るく輝いていて、しかも親しみやすい人だと思った』と語る。今回の妻夫木の役は難破した遣唐使船に乗り込んでいた日本人青年役で、スー・チー演じる女暗殺者を救い、世話をする役。『人間には光と影があるが、スー・チーが影で僕が光であってほしいのかなと思いながら演じた。監督が僕の人間性を見てオファーしてくれたことがうれしい』と妻夫木は自信を得たようだ。
また撮影前に剣術の練習をしておくように監督から言われて練習に励んだというが、『本番で渡されたのは短い棒きれ。剣術の棒はもっと長いのに、あまりの短さに苦笑した。でも剣術に対する精神的部分を学んだのが演技に役立ったと思う』と話す。そしてスー・チーとの共演シーンはほとんど無言。『言葉を交わさなくても、ふとした瞬間にわかり合うもの。そんな瞬間を彼女と分かち合った感じがして、心地よかった。でも最初は結構中国語の台詞があって勉強していったのに、カットされたようですね』と笑う。
日本のチャンバラ映画を見て育ったという監督。「座頭市」シリーズは全部みていると豪語する。そして藤沢周平の時代小説が大好きで、ぜひ映画化したいとか。そのときも妻夫木聡が起用されるかもしれない。楽しみである。
レポート:岡田光由
写真:妻夫木聡とホウ・シャオシェン監督
Photo by Mitsuyoshi Okada