映画祭も中盤にさしかかった中、コンペティション部門でもっぱら評判がいいのは、ナンニ・モレッティ監督の「マイ・マザー」とトッド・ヘーンズ監督の「キャロル」だ。
「マイ・マザー」は死期が近い母親の介護に、兄と共にあたる女性映画監督のドラマ。映画監督という職業柄、映画製作に取り組みながら数々のトラブルにも対処していくので日常大変なのに、さらに母親の介護が重なり、四苦八苦の毎日をとらえていく。アメリカから呼んだ俳優は一筋縄ではいかず、つい家族にもあたってしまう姿は、誰の身にも起こりそうで、大きな共感を呼んだのだろう。思わず涙ものの感動作だ。主演はマルゲリータ・バイで、モレッティ監督も兄役で出演している。ジョン・タトゥーロがアメリカ人俳優に扮し、いろいろと問題を起こす。日本の公開も決まったようだ。
一方、「キャロル」も日本公開が決定している作品で、「エデンより彼方へ」で夫のホモセクシュアリティに悩む妻を描いたヘーンズ監督が今度はレズビアンを題材に、若い女性の旅だちを描く。そして何よりも素晴らしいのは、ケート・ブランシェットの大人の女の色気というか魅力。若いデパートガールに扮したルーニー・マーラをすっかり呑み込んでいくほどの迫力も十分。
そのルーニー・マーラも初々しくて清純な魅力満開。見方によってオードリー・ヘプバーンか、ジーン・シモンズかと思わせる。その二人のケートが繰り広げるベッドシーンがすごい。さらに50年代の古き良きアメリカが舞台だけに、そのゴージャスな魅力は衣装から小物、美術装置にまで至って申し分ない。
記者会見にヘーンズ監督と現れた二人は映画そのもの。マーラの初々しさも可愛いが、ブランシェットの大人の色気と貫禄に記者たちも圧倒されてしまった。
レポート:岡田光由
写真:左からケート・ブランシェット、トッド・ヘーンズ監督、ルーニー・マーラ
Photo by Mitsuyoshi Okada