【A】キャサリン・ヘプバーン
キャサリン・ヘプバーンは「旅情」('55年)以来交遊関係にあったリーンに注目の新星、オトゥールを紹介し、ロレンス役に強くプッシュしてリーンの首を縦に振らせたのだが、その時点でも尚、リーンの頭にはもう1人、どうしてもロレンスを演じさせたい俳優がいた。アルバート・フィニーである。
諦めきれないリーンはフィニーのためにカメラ・テストを決行。それは、リーンの他に撮影監督のジョフリー・アンスワース、プロデューサーのサム・スピーゲル、アラビア史の権威、アンソニー・ナッティングが同席した本格的なものだった。
そして、リーンはすでにオトゥールが決まっていながらフィニーに改めてロレンス役をオファー。だが、フィニーは撮影のために長期間拘束されることを嫌がってリーンのオファーを断ってしまう。結果、ピーター・オトゥールは世界に羽ばたき、アルバート・フィニーは「土曜の夜と日曜の朝」('60年)でイギリス映画界イチオシの新人としてオトゥールに負けず劣らずのキャリアをスタートさせる。
(映画力がつく本:近代映画社刊より)