【A】ギャラがよかったから
「ミスター・グッドバーを探して」('77年)で初めて注目され、その後、テレンス・マリックの初期の代表作「天国の日々」('78年)やジョン・シュレシンジャーの「ヤンクス」('79年)を経て、「アメリカン・ジゴロ」('80年)の男娼役でブレイクしたギアさまことリチャード・ギア。
彼には自分は舞台出身のキャラクター・アクターだという自負があった。それは、「ジゴロ」以前の作品選びや、「ジゴロ」から「プリティ・ウーマン」('90年)までの出演作を見れば明らかなのだが、そんなギアさまが唯一ギャラの額に魅せられて出演したと後に語っているのが、「愛と青春の旅だち」('82年)。そして、映画は予想外に大ヒットして、ギアさまには本人の意気とは逆に恋愛映画の看板スターで、かつセックス・シンボルというイメージが定着してしまう。
この時期、目指す世界と現実の間でフラストレーション溜まりまくりのギアさまだったが、「プリティ・ウーマン」ですべて吹っ切れて、今や永遠のセックス・シンボルとしての道を、恥じらうことなく突き進んでいる。これも、ある意味スターの在り方なのだ。
(映画力がつく本:近代映画社刊より)