【A】
「めまい」の興行的失敗はスチュアートが老けて見えたからだと判断したため。
「めまい」('58年)はヒッチコッキアン(ヒッチコック・マニア)が最も好きな傑作中の傑作なのだが、なぜか興行的にはイマイチだった。
自信作が期待したほど観客に受け入れられなかった原因を、主演スター、ジミー・スチュアートの老け顔にあると判断したヒッチコックは、「北北西に進路を取れ」('59年)に少なからず興味を示して来たスチュアートを冷酷にも退け、人気では上を行くケーリー・グラントに振った。実はグラントの方が4歳も年上なのに。
スターは実年齢ではなく見てくれなのだ。ちなみに、配給元のMGMが主役に希望したグレゴリー・ペックは、グラントより一回りも若かった。
(映画力がつく本:近代映画社刊より)